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昨夏、北欧3ヶ国(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)を旅する機会があり、かねてからの念願であった各地の野外博物館に北欧民家を訪ねた。
古民家の野外博物館が世界で最初に創設されたのはストックホルムにあるスカンセンで、1891年のこと。北欧は、世界の野外博物館のパイオニアであり、それがモデルとなって、ヨーロッパ、北米へと広がり、日本各地の「民家園」誕生にも大きな影響を与えたのである。
○ 森と湖の国
世界中どこでもそうだが、かつて民家は、その地域にもっとも多く存在する自然素材でつくられてきた。そして気候や風土、暮らしのあり方によって建築構法の違いを生み出してきた。
北欧は「森と湖の国」である。厳しい自然条件と森資源に恵まれた北欧は、どんな住まいをつくってきたのであろうか。
スカンジナビア半島の3国は、縦に国境を接するが、北欧の自然や文化を考察する場合、さまざまな分野の研究者の間では、最北部の「北極圏」と南の地域を2分して、「冬の北欧」と「夏の北欧」に分けている。
「北極圏」は、夏は太陽が沈むことのない「白夜」となり、冬は日照時間の少ない雪に閉ざされた「極夜」となる。北に向かうにしたがって、低灌木のみでコケ類や地衣類の荒涼とした風景となる。
「冬の北欧」とは、冬になれば地形がすっかり変わるほどに雪に覆われ、道はなくなり、トナカイに曳かれたソリが自由に飛び回る森林地帯である。
これに対して「夏の北欧」とは、それほどの冬はやって来ず、年間を通して四輪車を用いることができる農耕地帯である。
○ 「冬の北欧」はログハウス
この地域は、欧州赤松の針葉樹に白樺の広葉樹が混じる森が広がる。下草が生い茂ることがなく、トナカイの餌となるコケやベリー類が広がる明るい森である。この地域の生業は、林業と畜産、湖やバルト海での漁業である。
この地域では、寒さから身を守る住まいを、豊富で真っ直ぐ伸びた欧州赤松を利用してつくり上げてきた。切り倒した木材を、直角に組み合わせながら積み上げて壁を構成する、「組積構法」(いわゆるログハウス)と呼ばれる構法である。屋根材も丸太を半割にしたものや厚板を使用したものが多い。ログハウスは、北欧の民家を代表する構法である。
○ 「夏の北欧」は落し板構法
北緯60度以南が「夏の北欧」と呼ばれる地域であるが、その境界辺りに首都のオスロ、ストックホルム、ヘルシンキが位置している。この地域は、欧州赤松の他に樹種は多様となり、カシやブナなどの広葉樹が多くなるが、森は減少する。平坦地が多く、大麦や小麦などの耕地が広がり、気候は比較的温暖である。
この地域の民家には、ふんだんに木材を使うログハウスは少なくなり、軸組構法による落し板構法や木骨構法が多くなる。落し板構法は、柱などの軸組に溝を彫り、そこに厚板を落し込んで壁を構成する。ログハウスより木材の使用量は少なくて済む。木骨構法は、落し板ではなく、壁材にレンガや石材を用いるもので、さらに木材の使用量が少ない。
「夏の北欧」では、壁材に平石やレンガや土壁を用いたり、また屋根も、土の上に芝草を生やしたり、茅葺きなども多くなり、ドイツやフランスなどのヨーロッパと同じような建築様式となってくる。
○ 気候風土により異なる建築構法
日本も北欧も木で家をつくってきたが、その建築構法は大きく異なる。これは、夏の高温多湿な日本と冬の寒さの厳しい北欧との、気候風土の違いが生み出したものといえよう。
日本の軸組構法は、神社の拝殿のように壁も建具もなく風通しのよい空間をつくることができる。これに対して、木材を積み上げるログハウスは、断熱性がよく寒冷地向きではあるが、開口部を広く取ることができず夏の暑い地域には適さない。
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北欧の国々には、各地にその地域に特徴的な民家が保存されており、人々は誇りをもって大切に守っていることが印象に残った旅であった。
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